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映画鑑賞会『用心棒』報告

  • 4 日前
  • 読了時間: 4分

「あ、白黒なんだ」


はじまってすぐにそうつぶやくと、周りから控えめな失笑が。。。


でも言い訳をさせてもらうと、このポスターが悪い。映画自体は白黒なのに、当時のポスターは手彩色で華やかに仕上げられている。広告効果としては成功かもしれないが、今となってはまぎわらしいことこのうえない。


いちおう自分の名誉のために言っておくが、知ってましたよ。白黒ってことは。

でも、このポスターを何度も見ているうちに失念してしまっていただけです。


そして思ったことはすぐ口に出してしまうのが、おじさんおばさんの悪い癖。

若者なら羞恥心やプライドがあっておいそれと失言はしないよう気をつけているのだろうが、いまさらカッコつけてもどうにもならない年齢になってくると、羞恥心よりも気になったことをため込まずに吐き出すほうが、精神衛生上よろしいということになってくる。


というわけで、己の失言もたいして気にせずに、映画の世界に没入です。


二組のヤクザが対立する宿場町。そこにふらりと流れ着いた浪人。清兵衛一家につくのか、丑寅(うしとら)一家につくのか。腕の立つ用心棒として、さいしょはうまく立ち回っているように見えるが、この桑畑三十郎と名乗る浪人は、清兵衛の後ろ盾となっている造り酒屋の徳右衛門の妾、おるいを家族のもとに返し、家族ともども逃がそうという情を見せたのが仇になり、丑寅一家に監禁され、激しい拷問をうける。

それまでは、瞬く間に敵を切り捨てていく凄腕の浪人で、大胆で度胸もあり、頭の回転もはやく、動きも俊敏、ただひたすらカッコいいのに、拷問を受けて腫れあがった顔で転がっているさまは、ひどく無様だ。

命からがらなんとか逃げ出した三十郎は、飯屋のおやじにかくまわれるが、清兵衛一家の用心棒になったと思いこんだ丑寅一家が、意を決して清兵衛の家に火を放ち、清兵衛一家をせん滅する。

丑寅一家に人質にとられた飯屋のおやじを助けるために、三十郎は一人乗り込み、丑寅一家を全滅させる。ヤクザのいなくなった宿場町を、一人去っていく三十郎。


すごく雑なあらすじを書くと、こんな感じである。


とりあえず、宿場町の抗争がわかりづらい。清兵衛一家と丑寅一家が対立していて、清兵衛には名主の多左衛門、丑寅には造り酒屋の徳右衛門がバックについている、という関係がわかるのに時間がかかった。そして、疑心暗鬼のだましあい。そのあいだを縫うように立ち回る三十郎。みなぼそぼそと早口で話すのは、リアリズムということなのか。


桑畑三十郎を演じる三船敏郎は、このとき40歳。懐手でぶらぶら歩き、あごをなでるしぐさがいちいちカッコいい。チェコ人作家、アンナ・ツィマの小説『シブヤで目覚めて』の主人公の少女ヤナは、プラハの大学生で、三船敏郎の大ファンという設定。DVDで『酔いどれ天使』を何回も見ている。三船がシャツを脱ぐシーンでうっとりしているのだが、三船をよく知らない私には、さっぱりピンとこない描写だった。

今回、脂の乗り切った三船を見て、好みかどうかはともかく、カッコいいということはよくわかった。

並みいる敵をバッタバッタと切り捨てていく。爽快。これぞ娯楽活劇。


丑寅の弟として途中から出てくる卯之助もいい。日本人離れした彫りの深い容貌でだれかと思ったら、仲代達矢だった。マフラーに拳銃で、怪しい妖気が漂う。

飯屋のおやじが東野英治郎というのは、あとでわかった。黄門様かぁ~。


この映画で三船演じる浪人は、名を問われて外に見えた桑畑から適当に「桑畑三十郎」と名乗るわけだが、『用心棒』の続編の『椿三十郎』では、庭に椿が見えたから「椿三十郎」と名乗るらしい。『椿三十郎』もそのうち見てみたい。


世界のクロサワ。なんだけど、私はほとんど見ていない。

これも言い訳になるが、私が映画をよく見ていた1990年代はミニシアター全盛期で、渋いヨーロッパ映画がたくさん上映されていたのだ。そちらを追いかけるだけで精一杯で、とても日本映画まで手が回らなかった。


今さらのクロサワだったが、おもしろかった。

それに今回は、クライテリオン・コレクション(The Criterion Collection)のブルーレイでの上映だった。


クライテリオン・コレクションとは、

「1984年の設立以来、世界中の重要な古典映画や現代映画を最高の技術品質で提供している。映画好きが納得するセレクトと魅力的なジャケットも愛される理由だ。」(The Hollywood Reporter Japanより)


参加してくださる映画好きの方からお借りした。おかげで高画質でクロサワの娯楽活劇を堪能できた。ありがたい。


ラスト、よけいな余韻を引きずらずにあっさり終わるところも、落語のサゲのようでよかった。ストンと落として終わり。粋だね。



                 *  *  *  


鑑賞後は、いつものように後片付けをして、部屋を原状回復。希望者のみ近くの居酒屋で二次会をしました。次回はなにを見ようかという相談をしたのは覚えているのですが、それ以外はなにを話したっけ?

きっと他愛ない話だと思うのですが、覚えていないぐらいのほうがいいんです。そういう時間が、一番楽しいと思いませんか? 次回はぜひごいっしょに!


(MHM 遠藤尚子)



 
 
 

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