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映画鑑賞会『欲望の翼』報告

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8月29日(金)、JAIP映画鑑賞会 ウォン・カーウァイ監督 『欲望の翼』を鑑賞しました。


場所は水道橋のレンタルルーム545_SpemoCINEMA水道橋。ここは、映画鑑賞に特化したレンタルルームで、ゆったりしたソファーに座り、大スクリーンで4Kの高精細な画像が楽しめます。


「545_SpemoCINEMA水道橋」ホームページより
「545_SpemoCINEMA水道橋」ホームページより

夕方6時半に集合して、始まる前に各自持参したもので手早く夕飯を済ませました。いなり寿司や唐揚げ、スナック菓子、ベーグル、チーズ、ドーナツ、ワイン、ウイスキー(ロックアイスと炭酸水も!)などの差し入れがありました。グラス、皿、箸はレンタルルームにおいてあって無料で使えます。今回はポップコーンマシーン、コーヒーメーカーは使う時間がありませんでしたが、こちらも無料オプションで使用することができるので、いつか使ってみようと思います。

 

7時少し過ぎから、『欲望の翼』の上映を開始しました。事前に下見をして、プロジェクターやDVD, Blue-rayプレーヤーの使い方は試していたので、スムーズに上映することができました。今回は、Blue-rayでの鑑賞でしたが、参加者がアカウントを持っていれば、ネットフリックスやアマゾンプライムなどの動画配信も見ることができます。

 

以下は、映画の感想です。

 

                  *   * *

 

さびれた建物の中を男が歩いていく。売店の脇のボックスから飲み物の瓶を取り出し、ボックス側面の栓抜きにひっかけて栓を抜く。売店の売り子の若い女に金を払いながら名前を聞く。すげなく断る女。女の耳元で「夢で会おう」という男。


男のきざなセリフも、どこか夢の中のような映像では違和感なく受け入れてしまえる。

画面が切り替わり、椰子の木がおい茂る熱帯雨林のようなジャングルを、カメラが俯瞰でゆっくりと移動していく。そしてゆったりした甘いラテンの音楽。どこか夢見るような・・・。


『欲望の翼』は、そんなふうにはじまる。


恋に落ちる男と女。売店の売り子のスー(マギー・チャン)は、言い寄ってきた男、ヨディ(レスリー・チャン)との結婚を考えるようになる。しかし家族に紹介するというスーに、ヨディは結婚には興味がないとあっさり振ってしまい、踊り子のミミ(カリーナ・ラウ)に手を出す。ミミもほどなくヨディにぞっこんになるが、ヨディはどこまでも覚めたままだ。


ヨディには恋多き母親がいて、しかも本当の母親ではなく、生みの親は別にいる。この育ての母を愛しながら、同時に憎んでもいるヨディ。なぜなら育ての母は決して生みの母のことを教えてくれないから。ヨディのどこか投げやりな、虚無的な生き方は、二人の母に愛されない、という不幸な生い立ちからきているのだろうか。さいしょの関係づくりにうまくいっていないから、ヨディはどの女性ともうまく関係を築けないし、続けていくことができない。


途中何度か、「足のない鳥」の話が出てくる。

「脚のない鳥がいるそうだ。ただ飛び続けて、疲れたら風に乗って眠る。地上に下りるのは、死ぬときだけだ。」


ヨディが気に入っているこの話は、彼自身が「足のない鳥」で、でもだれかに地上に降りる足を見つけてほしい、というかなわない願望なのかもしれない。

だとしたらあまりにも切ない。

 

私はこの映画を見て、ある歌人が言った「生きる」と「生きのびる」ということを考えた。

たとえば来週死ぬとわかっていれば、私たちは残された時間を「生きる」だろう。でも、いつ死ぬかはわからないけどしばらくは死なない、となれば、私たちは、とりあえず「生きのびる」ために働き、貯金をしたり、保険に入ったり、嫌いな人ともがまんしてつきあったりをしなければならなくなる。でも本当は、今したいことをするのが「生きる」ことであるはずなんだ、とだれもが思っている。だからヨディのような生き方は、まさに今を「生きている」かんじがして、そのあやうさも含めて私たちを魅了するのだろう。

 

ヨディのように、刹那的に今だけを生きていけたら、とだれしもが思うだろう。とりわけ若いころは。

けれども私は、「生きる」ことをしたいと思いながらも、「生きのびる」生き方をしてきてしまったし、きっとこれからもそうやって「生きのびて」いくだろう。そしておそらく多くの人がそうやって日々を「生きのびて」いる。

 

この映画を見て、もう一つ思い出したことがある。それは、村上春樹の『ノルウェイの森』のラスト、電話ボックスで主人公が「僕は今どこにいるのだ?」と自問する場面だ。あの、存在することの不確かさ、よってたつものがない不安感。孤独。

主人公の「僕」とヨディは、どこか重なる気がした。

『ノルウェイの森』の刊行が1987年、『欲望の翼』は、1990年の制作。あの時代に特有の「空気」のようなものを、両方の作品に感じた。

 

それなりに年をとってからこの映画を見ると、若いヨディの生きかたは、あまりにもナイーブすぎる。でもだからこそ、二度と戻れない若い日々の、甘やかさと苦々しさがまじったような感情が胸に去来して、しばしその余韻から抜け出せなくなってしまった。

 

               *   * *

 

上映後は、映画の感想も話しつつ、次回はなにを見よう、という相談で盛り上がりました。

前にも書きましたが、今の時代、動画配信サービスがたくさんあって、いつでも好きな映画を見ることはできます。でも、一つの映画をみんなで見て、それについて話すことができる機会というのは、案外少ないものです。この映画鑑賞会が、そういう機会になればいいなと思っています。


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とはいえ悩むのは、映画の選定です。万人受けする映画は、結果的に誰の心にも響かない、という可能性があります。ということで、開き直って自分たちが見てみたい映画、ということになるのですが、それでも今度は見たい映画がいろいろあって悩んでしまう。うれしい悲鳴ではあるのですが。。。

あれはどう?これもいいよ、え?それどんな映画?みたいなやりとりをして(これが楽しい!)、結局最後は、この映画鑑賞会の責任者である私の独断で決めました。

 

近くご案内を出しますので、乞うご期待。

 

レンタルルームなので、退室15分前から片付け、掃除をはじめます。使った食器類は洗ってペーパータオルで拭いて、元の場所へ。テーブルはウェットティッシュで拭き、掃除機で部屋を掃除して、ごみ袋は口を縛ってごみ用のコンテナへ入れます。

退室時に原状回復の証拠として写真を4枚とって鍵をかけたら完了です。

 

その後、希望者で近くの居酒屋に行って二次会です。メジャーなものからマニアックなものまで、映画談義が楽しかったです。

 

こんなかんじで続けていきますので、あんまりたくさん映画は見ていないけど興味があるという方も、ガチ映画マニアの方も、どなたでも歓迎します!お気軽にご参加ください。


(MHM 遠藤尚子)


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