
去る11月4日、出版クラブにて「焼酎セミナー」が行われました。日本洋書協会(JAIP)では、2015年に「日本酒セミナー」が、そのまえには「ウィスキー・セミナー」が行われ、大変盛況だったと聞いています。
今回の「焼酎セミナー」は、本来であればもっと早くに開催されるはずでしたが、コロナ禍で延期。今年の夏に一旦は開催予定の案内がありましたが、コロナの感染者拡大でまたしても延期。秋になってようやく開催の運びとなりました。
人数制限をして、広めの会場に間隔をあけた配置で、感染対策をとっての開催となりました。
焼酎を用意してくださったのは、熊本県の球磨焼酎蔵元である大和一酒造元さんです。代表社員の下田文仁さんに、まずは焼酎の歴史や製法をレクチャーしていただきました。下田さんは明るくてお話の上手な方で、パワーポイントを使ってのレクチャーはとても楽しくて飽きることなく聞くことができました。

なんとなく九州の焼酎というと、サツマイモが原料の芋焼酎を思い浮かべてしまいますが、球磨地方は昔から米焼酎をつくっていたそうで、意外でした。焼酎が育まれる球磨地方の風土についての説明のとき、2020年の熊本豪雨で球磨川が氾濫し、大和一酒造元さんも建物の1階部分がすべて浸水するという壊滅的な被害を受けたことを、さらりと話してくださいました。画面に映し出された当時の写真には、無残に倒れたタンクなど被害の様子が映っており、その甚大さ、深刻さに言葉もありませんでした。そんな状況の中、すぐに設備をととのえて焼酎造りを再開されたという下田さんの熱意と不屈の精神に、頭が下がる思いでした。
さて、そのあとはお待ちかね、いろいろな焼酎の説明を、実際に試飲しながらうかがっていくというお楽しみの時間です。

まずは、「温泉焼酎夢」。文字通り温泉水を使用した米焼酎。くせがなくてさらりとした口あたりでした。
その次は、「牛乳焼酎 牧場の夢」。米焼酎ですが、牛乳と良質の水、そして温泉水を使用してつくられています。日本酒の純米吟醸のような、フルーティーな飲み口。

そのあとは、芋焼酎の代表格、霧島酒造の「黒霧島」と、麦焼酎は、豊永酒造というところの「麦汁」をいただきました。おどろいたのは「麦汁」。口に含んだ瞬間、香ばしい麦のかおりが広がり、まるで「飲む‘焼きたてパン’」といったかんじでした。
そしてまた大和一酒造元さんの焼酎に戻って、玄米焼酎の「球磨川」、「隠礼里」、復古酒の「明治波濤歌」をいただきました。

「球磨川」は、2020年の豪雨で流されてしまった酵母菌の代わりに、球磨川が運んできた天然酵母を使用した、自然発酵の玄米焼酎です。「球磨川」も「隠礼里」もとてもしっかりした味わいながら飲みやすく、肉料理に合うお酒だと感じました。
最後にいただいた「明治波濤歌」は、室町時代から受け継がれた製法を、明治期の文献をもとに復活させた玄米焼酎です。こちらは小さなおちょこで熱燗でいただきました。最後に熱燗というのが、なんとも気持ちがほっとしました。

そして、酒の肴として、丸の内オアゾの熊本料理と焼酎の店「わかどり」さんの折り詰め料理が提供されました。こちらはからしレンコンや馬肉メンチなど、熊本名物がつまった特製の折り詰めで、焼酎に合うつまみがそろっており、参加者のみなさんに大好評でした。
最初は硬かった会場の雰囲気も、お酒が入るにつれほぐれてきて、おいしい焼酎と料理をいただきながら、なごやかに歓談する楽しい時間を過ごすことができました。
試飲といいながら、プラスチックのコップにはけっこうな量の焼酎が入っていて、しかも次から次へと早いピッチで提供されるので、最近めっきりお酒が弱くなっている私は、後半すっかりいい気分。焼酎もお料理もじゅうぶん堪能しました。
焼酎を用意してくださり、楽しいレクチャーもしてくださった大和一酒造元の下田さん、本当にありがとうございました。
(株式会社MHM 遠藤尚子)
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